こんにちは。
ベースボールバイブルの東です。
ソフトバンクホークスの和田毅投手がダイヤモンド・オンラインで書かれている記事が非常に面白いです。今日は、その中のひとつである「マウンドで投手が考えていること」を紹介させていただきます。
まず、彼が優れた投手コーチになるんだろうなと思わせてくれるのが何気ないこの一文です。
今回は、マウンドに立っているピッチャーの心理状態について語ってみようと思う。ただし、これはあくまでも僕個人の経験に基づいたものでしかなく、すべてのピッチャーがそうだというわけではないことは強調しておきたい。
ですから、そういうことを頭に入れながら和田選手の話を聞いてみましょう。
では、まず試合中のマウンドで最も心掛けていることについて。
試合中のマウンドで僕が最も心掛けていることは、言うまでもなく「いかにして、その回の相手の攻撃を0点に抑えるか」である。「目の前のバッターを打ち取り、アウトを積み重ねること」が基本なのは間違いない。
ただ、こんなことも書かれています。
しかし、試合の状況次第では、その考え方だけでは乗り切れない場面が出てくることがある。
たとえば、1点を争う試合で、2アウト・ランナー三塁のピンチを迎えた場合。3アウトチェンジになるまでの、あと一つのアウトをどうやって奪うか……僕は打席に立つ「目の前のバッター」だけではなく、ネクストバッターズサークルに控える「次のバッター」のことも考慮している。
目の前のバッターと次のバッターの個人的な能力差。その日の調子。過去の対戦データに基づく自分との相性。それらを総合的に見たうえで、どうすれば「残り一つのアウトを奪える確率」が高くなるのかを考えるわけだ。
もし、目の前のバッターより、次のバッターからのほうがアウトを奪いやすいという結論に至れば、目の前のバッターとの対戦では「フォアボール」の選択肢も出てくるだろう。そうなると当然、キャッチャーの配球も変わってくる。
とはいえ、最初から勝負を避けるわけではない。絶対に点を取られてはいけない場面なので、ストライクゾーンいっぱいの厳しいコースを突いていきながら、結果的に「ボール」が先行してフォアボールになるというケースも想定するのだ。
さあ、そのフォアボールについての和田投手の考え方はこうです。
一般に「フォアボールを出すピッチャーは悪い」という見方があるが、僕は一概にそうは思わない。もちろん、ストライクが入らない結果、バッターを一塁へ歩かせてしまうのは「悪いフォアボール」だ。しかし、「よいフォアボール」はないにしても、「やむを得ないフォアボール」はあると思う。
上記の状況でも、目の前の打者をフォアボールで歩かせ、2アウト・一三塁になってから、次の打者を打ち取れば、相手を0点に抑えたことには変わりない。だとすれば、そのフォアボールにも意味があったと言えるのではないか。他にも、たとえば1アウト・二塁で強打者を迎えた場合で、そのバッターをフォアボールで歩かせて次のバッターをゲッツーに打ち取る、というパターンも考えられる。
「悪いフォアボール」と「やむを得ないフォアボール」。
ピッチャーであればこういう考え方はぜひ取り入れたいですね。
まあ、要するに和田投手はただ投げているだけではないということです。
それは、こんな考え方にも現れています。
僕がピッチャーとして最優先するのは、相手の攻撃を0点に抑えること。しかし、ゲームの運び次第では、この原則すら変更を迫られることがある。つまり、「1点なら与えてもいい」と考えるような場面である。
たとえば、3-0とリードした試合の終盤で、0アウト・二三塁のピンチを迎えたとしよう。ここで最悪のパターンは、次のバッターに3ランホームランを打たれて同点に追いつかれることだ。だから、こういうときは「なんとか1失点、最悪でも2失点で切り抜けよう」というふうに、考え方を切り替える。先ほど紹介した「やむを得ないフォアボール」にも通じる「やむを得ない1失点」である。
「やむを得ないフォアボール」に「やむを得ない1失点」。
それにこんなことまで考えているそうですよ。
「最悪のパターンを避け、傷口を最小限にとどめる」という考え方は、他の場面にも通用する。2点リードした試合の終盤……たとえば7回に先頭バッターを歩かせ、次のバッターにヒットを打たれて、いきなり0アウト・一二塁のピンチに陥ったとしよう。こういう状況でも、ピッチャーとしての僕は「自分でピンチを切り抜けたい!」という気持ちを当然持っている。しかし、7回ともなれば、球数が100球を超えて、疲れが出はじめているかもしれない。だとすると、ベンチはピッチャー交代の準備を開始しているだろう。そんなときは「……もし交代になったとして、どんなかたちでリリーフピッチャーに引き継ぐのがベストだろうか?」というふうに、交代の可能性も念頭に置きながら、より慎重にピッチングを進めていくスタイルに切り替えるのだ。
あくまでも一般論だが、プロ野球のチームには、主にリードしている試合展開で登板するリリーフピッチャーがいる。いわゆる「勝利の方程式」と言われる継投策だ。
「7回時点でチームがリードしているなら、ブルペンでは勝ちパターンのリリーフが準備しているはず……。しかし、もし逆転を許したら、違うピッチャーが登板することになるかもしれない。よし、シングルのタイムリーヒットで1点差に迫られることがあっても、長打での同点だけは避けよう」――そう考えて、次のバッターとの対戦に臨むこともある。
あるいは、こちらが1アウトも奪えないまま、イニング冒頭から投球が乱れてしまった場合、リリーフピッチャーのブルペンでの準備時間が不足することにもなりかねない。そうなると、チーム全体にとってもマイナスに作用してしまう。そこで、あえて牽制球を多くしたりして、ルールの範囲内で時間稼ぎをする場合もある。
僕自身もピッチャーなので「自分で最後まで投げ切りたい!」という強い思いは、もちろん心の中に持っているし、どんなときも、「自分で3アウトを取り、相手の攻撃を0点に抑える」という気持ちは忘れていない。
しかし、チームにとっての至上命題は「試合に勝つこと」「負けないこと」である。そのためには、僕が1点を打たれることすらも、やはり選択肢の一つとして考えないわけにはいかないのだ。
ここまで考えるのは異次元ですが最後はこんな文章で締めくくられています。
とはいえ、前回も書いたとおり、これについてはまだ結論が出ていない。本当はある種の「無の境地」でピッチングできるのが理想なのかもしれないからだ。
また、自分の持っているバッターの攻略法のすべてを駆使した挙句、万策尽きたら──しかも、それが日本一を決定する試合の9回裏2アウトフルベースフルカウントという究極の状況だとしたら──さすがの僕も「どうにでもなれ!」という気持ちで最後の1球を投げるのかもしれない。
逆の言い方をすれば、そこまで追い詰められなければ僕は、マウンド上で考えることを放棄しないだろう。そして、いまのところ、考えることを諦めない心は、僕の大切な武器の一つだと思っている。
いや〜、素晴らしいです。
今、頑張ってピッチャーをしている選手にはぜひとも読んでほしい。
ピッチャーって投げてるだけじゃないんですね。
超一流の身体能力を持っていなかったとしても…
超一流のボールが投げられなかったとしても…
思うようにボールがコントロールできて、レベルの高い考え方ができれば野球界では十分戦っていけるようです。
ですから、ぜひこの和田投手の考え方は参考にしてほしいと思います。
では、また。
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