バッティング

【松中信彦氏が語る】15歳以下の野球選手の育て方とは?

こんにちは。
ベースボールバイブルの東です。

NPBで三冠王に輝いた松中信彦氏が15歳以下の選手たちの育成法について話しておられる記事がありましたので紹介させていただきます。

3月に開催された第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)。世界一を目指した野球日本代表「侍ジャパン」は2大会連続ベスト4という成績に終わった。今後の日本野球界の課題、育成年代において必要となっていることとは何か――。2006年の第1回大会で、王貞治監督の下、侍ジャパンの4番として世界一に輝いた元福岡ソフトバンクの松中信彦氏に、日本の野球界の将来を担うU-12、U-15世代の育成に必要なことを聞いた。

――今、各年代の侍ジャパンが結成されています。日本の将来を担うU-12、U-15世代。彼らにとって、子供のうちに身につけておくべきことは何だとお考えになりますか。

「一言で言うのは凄く難しいことですね。子供の世代で日の丸を背負えるというのはいい経験だと思います。ただ、僕が1番言いたいことは、そこで無理をして欲しくないということ。そこが目標じゃないっていうのは、子供たちに言いたいですね。これから先、高校だったり、プロだったり、その先に侍ジャパンのトップチームがあったりする。その段階の途中なので、活躍したいという気持ちもあると思うけど、絶対に無理だけはして欲しくないというのが正直なところです」

――怪我を抱えて無理して出るようなことはするべきではない、ということですね。

「どこか痛いのに、選ばれたから、無理して投げないといけないとは考えずに、まだまだ先があるという思いは忘れないで欲しいですね。日の丸をつけて戦うというのはいい経験ではあると思いますが、そこで大きな怪我をしてしまっては、何も先には残らない。U-12、U-15という世代にはいい経験だけど、その侍ジャパンを目標にし過ぎると野球選手として仕上がってしまう、伸び代がなくなってしまうのでは。もっと野球を楽しんで、大きく育ってほしい。日本代表に入る子は素質がある子だからこそ、ノビノビと野球をやって欲しいですね」

「楽しむこと」と「型にはまらないこと」

――世界と戦うことで、野球をもっと好きになるキッカケにして欲しい。

「そうですね。勝つことが全てではなくて、海外の選手と対戦して、差を感じるとか、ああこういう凄い選手がいるんだとか、そういうのを感じるだけでもいいと思う。子供たちの世代に、勝敗はそんなにいらないのかな、と。勝敗にガツガツとこだわって欲しくはないです」

――では、そのU-12、U-15世代の子供たちが大きく成長するために必要なことは何でしょう。

「とにかく野球を楽しいと思うこと、そして、型にはまらないこと、ですね。基本をちゃんと身につけることは必要ですけど、例えば、打つことに関して言えば、(福岡ソフトバンクの)柳田(悠岐)選手のようにフルスイングが出来るとか、誰よりもボールを遠くに飛ばせるとか、とにかくそういう長所を伸ばしていくべきですね。極端なことを言ってしまえば、まとまった選手はいらない。投手でいえば、その世代なら130キロ、140キロ投げられるとか、遠投が凄く遠くに投げられるとか。そういう長所をどんどん伸ばしていって欲しい」

――例えば、子供の中にはすごく球は速いけど、ストライクが入らないという子もいると思います。

「それはそれでいいと思います。例えば、小学生で120、130キロ投げるピッチャーなんて、そうそういないでしょう。ストライクなんて入らなくてもいいんですよ。バッターなら、めちゃくちゃ飛ばすけど、なかなかバットに当たらない子もいるでしょうけど、それもそれでいい。高校、大学と進むにつれて、教えてくれる指導者がいて、変わっていけばいいわけなので。

柳田選手だって、そうだったでしょう。プロに入ったとき、全くバットに当たらなかったのに、今ではあんなに当たる。あれは経験であり、教えであり、結果が自信に繋がっているから、変わるんですよ。でも、もともと、あれだけバットを振れる選手って、そうそういないんですよ。それが彼の長所なんです」

「もっとボールを見ろ!」の指導でファールや空振りに…松中氏がかけた言葉は?

――バットに当たらないからといって、当てるために型にはめてしまうような指導もあると感じます。

「この前ね、子供に『もっとボールを見ろ!』って言っていた人がいたんです。でもね、それは間違いなんですよ。ボールを見て打てるわけじゃない。ボールを見て打ったら、だいたいファールか空振りなんですよ。それは教え方が悪い。『ボールを振るな』っていうと、振っちゃったり、ストライクでも見逃しちゃったりします。そうではなくて、逆に『全部振れ! 自分でボールだと思った時だけ見逃せ!』って言ってあげたら、ちゃんとボールを見逃すし、ポイントが前になってヒットも打てたんですよね」

――よく子供世代で言われることは正しくないと。

「そういう教え方が根本的に間違っていると思いますね。『ボールを振るな!』って言われると、子供は小さくなっちゃうからね。『振れ! どんどん振れ!』でいいと思います。中途半端よりも、『思い切り空振り三振してこい』くらいが1番いいと思います。バットを振るということは、どうやって振らないといけないかを考えますし、振る力も必要だし、振っていくうちにそういうものが身についていくので。僕も子供の頃は『とにかく遠くに飛ばせ』と親父に言われていたよね」

――とにかくノビノビとやって、長所を伸ばすことが大切。

「小・中学生世代の指導者の方には、短所を直すよりも、どんどん長所を伸ばしていく指導をして欲しいと思いますね。その世代は短所には目をつぶっていいと思います。高校、大学、社会人、プロと進んでいく間に短所は少しずつ直していけばいい。もちろん基本あってのことですけどね。基本を教える中で、長所はどんどん伸ばしていく。

飛ばせるのなら『もっと飛ばせ』『どんどんバットを振れ』と選手を乗せてあげて。そうすれば、どんどんバットを振って、そうなると、それだけ体を使わないといけなくなる。背筋を使うし、筋トレではなくても、バットを振る筋力がつくようになります。そして、そこに技術が身についていけば、もっと怖い打者になれます。とにかく、子供たちに必要なことは、長所を伸ばしていってあげることだと思いますね」

元三冠王が考える育成法 「バットに当たらなくてもいい」その真意とは?|日本通運「侍ジャパン」応援特設サイト

『極端なことを言ってしまえば、まとまった選手はいらない。』

これって言葉にするのは簡単ですけど、我慢するのは本当に大変だと思うんですよね。だって勝とうと思ったらまとまってない選手は使えませんもん。それを我慢できるかどうかって選手としての思いが試されているような気がするんですよね。だって指導者はまとまった選手の方が使いやすいんですからまとまった選手を使いますよ。でも、そこを我慢して20歳ぐらいで完成を目指せるかどうかって僕は選手としての思いだと思ってるんですよね。でもね、一般的にはできるだけ早く完成させようとしている親子が多いように思うわけです。結果、スケールの小さい選手が量産されているっていう印象です。

ちょっとだけ例えばの話をさせていただきますけど…

今、オリックスで活躍している吉田正尚選手の中学時代の同級生がこんなことを言ってたんですよね。「吉田は試合では全然打たなかったんですよ」って。もちろん中学3年生になると練習では良い打球を打っていたそうですが試合になると全然打たなかったって言うんですね。そんな毎日だとですよ。普通は『もうちょっとバットに当たるように…』ってなるじゃないですか。まあ、もちろん多少は悩んだのかもしれませんよ。でも、彼はそれでもメジャーリーガーのような打球が打ちたいという思いが勝ったんだと思うんですよね。ぜひ、この話を聞いてみてください。ちょこんちょこんとヒットを打ちたいと思っていたなんて微塵も感じませんから。

このように彼は常にスケールの大きな選手になることを目指していたんですね。例え同級生に『全然打たない』って思われても…。それを我慢して毎日を過ごすって考えただけでもつらい毎日のように思いますけど、それによって今の吉田選手がいるんですね。もちろん全ての選手に吉田選手のような思いを持って野球をしろだなんて言いたいわけではありませんけど、何のために野球をやっているのかって考えた時にそれに背かない毎日を過ごして欲しいなと思います。

まあ、参考まで。

では、また。

 

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